日歯連事件、巨額献金の背景に迫れ  東京新聞

日歯連事件 巨額献金の背景に迫れ

2015年10月2日東京新聞

 政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)をめぐる不正献金事件が明るみに出た。元幹部三人が政治資金規正法に触れる巨額のカネを国会議員側に渡した疑いだ。背景解明に全力を尽くしてほしい。
 政治資金規正法では政治団体間での年間五千万円を超える献金は違法になる。寄付の上限を超える場合は「量的制限違反」と呼ぶ。
 自民党石井みどり参院議員の後援会に二〇一三年三月に日歯連から四千五百万円が寄付された。だが、同年一月には民主党の西村正美参院議員の後援会に五千万円が渡っていて、このカネも石井議員の後援会に回ったらしい。迂回(うかい)献金だ。
 合計して九千五百万円。これが量的制限違反にあたると、東京地検は判断して、日歯連前会長らの逮捕に踏み切った。
 もちろん迂回献金だから、政治資金の収支報告書には、わざと偽りの記述をしなければならなくなる。これが同法で禁じた「虚偽記入」であり、入金・出金の記載がないものを「不記載」という。だから、一三年の献金は、量的制限違反であり、虚偽記入、不記載にもあたるわけだ。
 まったく同じ構図で、一〇年にも日歯連から西村議員の後援会に巨額のカネが渡っていたと東京地検はみている。だが、量的制限違反の時効は三年なので、このケースはそれには問えず、時効五年の虚偽記入と不記載によって逮捕容疑に加えている。
 問題なのは、何の目的で不正献金をしたかだ。石井議員も西村議員ももともと歯科医師だった。いわば“組織内”の議員なのだろう。日歯連の顧問でもある。献金当時、ともに厚生労働委員会に加わり、石井議員は参院の厚生労働委員長でもあった。
 一三年といえば、石井議員が出馬した参院選があった年だ。その選挙のための資金操作だったのだろうか。組織内候補とはいえ、これほど巨額なカネを動かさねばならない理由は何なのか、東京地検は徹底して捜査してほしい。
 とくに日歯連をめぐっては、〇四年に自民党橋本派への一億円の闇献金事件が発覚している。村岡兼造官房長官は在宅起訴され、有罪が確定したが、自民党政治資金団体国民政治協会」を経由した迂回献金疑惑については立件されずに終わった。
 日歯連と政界との関係、医療政策とのかかわりへも捜査はずばり切り込まねば、世論の期待に到底沿えない。